盲導犬情報

盲導犬を希望される方や、すでにユーザーとして生活されている方、視覚障がい者団体や施設を対象に年2回発行される情報誌です。点字版と墨字(活字)版、音声版の3種類があります。送付ご希望の方は、下記「お問い合わせ」フォームあるいは電話(03-5367-9770)にて、ご連絡ください。

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最新号

『盲導犬情報』 第33号 ~認定NPO法人全国盲導犬施設連合会 情報誌~

今号の内容
1.職員相互研修「動物福祉に関する勉強会~世界的な流れの補助犬に対する影響~」
2.2024ほじょ犬の日 啓発シンポジウムに参加
3.レゴランド・ジャパン・リゾート 研修会に参加
4.盲導犬ユーザーのコーナー
  「犬が見せてくれた風景」 岡山県 井上孝江
5.盲導犬情報ボックス
「都道府県別 日本の補助犬実働数」
6.編集後記

1.職員相互研修「動物福祉に関する勉強会~世界的な流れの補助犬に対する影響~」
 2023年7月、ADI(国際補助犬連盟) とIGDF(国際盲導犬連盟)が犬の福祉に関する共同声明を発表しました。
 この声明は、犬は喜びや恐怖、不安などの感情を感じることができる生き物であることを認識し、強制的や罰を与える訓練ではなく、ごほうびや報酬によって望ましい行動に変えていく訓練方法や、最も侵害が少なく、嫌悪が最小限の(LIMA)トレーニングモデルの使用を提唱しており、スタッフ、ボランティア、クライアント、および外部コンサルタントによる、すべての犬と子犬の倫理的なトレーニングと取り扱いをサポートすることを目的としています。
 世界の補助犬団体が「犬の福祉」に注力し始めた「今」、私たち盲導犬育成団体や関係者が考えるべきことや意識すべきことを、改めて皆で学び考える場として、全国盲導犬施設連合会では加盟施設職員を対象に動物福祉に関する勉強会を2024年4月12日に実施しました。
講師には動物福祉の世界に大変造詣が深い山﨑恵子先生をお招きし、「動物の福祉とは 5つの自由とその先を考える」というテーマにてお話を頂きました。
 山﨑先生は、動物福祉の考え方としてベースとなる「5つの自由」ができた背景と、より一層進化した「5つの領域」の話、ADIとIGDFの共同声明にある「LIMA」について、さらには養鶏場やイルカ漁、TVに出演していたチンパンジーの話などを交えながら「動物は『可愛い』、『可哀想』だけではなく、その動物はどういう動物だろう、とリスペクトしなければ人間との共存はできない」と強調されました。
 そして私たち盲導犬育成事業者へ、「盲導犬が気の毒だ、可哀想だという風潮を変えるには、自分達が犬達にリスペクトを持って日々接していることを、社会へもっと普及させなければならない」、さらには「犬の福祉を守るには、飼い主であるユーザーへの教育・伝え方を常に考えていく必要がある」と呼びかけました。
 訓練士や育成事業関係者、ユーザーなど、盲導犬に関わるすべての人々が、盲導犬を育てる過程で関わった犬も含めたすべての犬達へリスペクトの気持ちを持つことで、初めて動物の福祉は守られます。動物福祉は、日本での認知度はまだまだ低いと感じられますが、盲導犬業界こそ率先して犬の福祉を正しく理解し、実践し、そして社会にも普及させることが大切なのだと気が引き締まる研修会となりました。

2.2024ほじょ犬の日 啓発シンポジウムに参加
 2024年5月21日、身体障害者補助犬を推進する議員の会主催による「2024ほじょ犬の日啓発シンポジウム」が衆議院第一議員会館にて開催されました。
 第一部では「災害支援と障害者~インクルーシブ防災への課題~」をテーマに、日本障害フォーラム(JDF)代表である、東北福祉大学の阿部一彦名誉教授より、能登半島地震を例に、被災障害者支援の現状と課題についてご講演がありました。当事者団体・関係者だけではなく、地域の住民組織等との相互理解と連携を図り、誰一人取り残さない「インクルーシブ防災」の取り組みが大切であるとお話しされました。その後、2023年に補助犬3種とユーザーが参加し行われた「ヘリコプターによる補助犬同伴救助訓練」について、浜松市消防局警防課の消防航空隊回転翼航空機機長である小笠原光峰氏より報告がありました。「当初はPR犬で訓練を行う予定だったが、実際のユーザーが参加してくれたことは大変有意義だった。救助現場で補助犬を救助できない場合、ユーザーご自身の救助すら辞退される可能性が高いと感じるほど、ユーザーと補助犬の絆は非常に強いことがわかった」とお話しされました。現在、NPO法人日本補助犬情報センターのYouTubeチャンネルでは、訓練の様子や訓練時に救助を担当した隊員のインタビュー動画を視聴することが出来ます。


 第二部では「どう変わった?改正障害者差別解消法~障害者権利条約に照らして~」をテーマに、2024年4月からスタートした「改正障害者差別解消法」について、大胡田誠弁護士、東洋大学人間科学総合研究所の川内美彦氏から実例を交えてお話がありました。川内氏からは「『配慮』というと事業者から当事者への一方通行的な印象を受けるが、本来は当事者と事業者が互いに落としどころを見つけ、今できることを調整して問題を解決するのが『合理的配慮』。日本語としては『適切な調整』という言葉が良いのではないかと個人的に思っている」という印象的なお話がありました。合理的配慮とは、決まったパターンや正解があるわけではなく、状況や場面によって解決する方法や着地点が変わってくるため、同じような障害のある人でも解決する方法はそれぞれ違うことを再認識しました。
 シンポジウムを通じて、障害のある人と事業者が一緒に解決する道を探していく「建設的対話」が重要であるということを、改めて確認することができました。

3.レゴランド・ジャパン・リゾート 研修会に参加
 今年の夏もとても暑かったですね。猛暑を過ぎ、そろそろ盲導犬とともにどこかへ遊びに行きたい!とお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。愛知県名古屋市にあるテーマパーク「レゴランド・ジャパン」は補助犬をお連れのお客様も積極的に受け入れている施設の一つです。2022年と少し前の出来事ですが、中部盲導犬協会がレゴランド・ジャパンさまにお呼ばれして、今後の補助犬の受け入れについてお話ししてきました。今号ではその内容を中部盲導犬協会より皆さまへお伝えします。

レゴランド・ジャパン・リゾート 研修会に参加  社会福祉法人 中部盲導犬協会
 2022年6月、レゴランド・ジャパンさまより「今後の補助犬受け入れの為に参考にしたい」と施設訪問のお声がけをいただき、研修会に参加しました。
 リゾート内各施設を中部盲導犬協会職員とPR犬が、レゴランドのご担当者さまにご案内いただき、補助犬同伴についてのご相談・確認をしました。盲導犬のトイレはどうするのか、犬のために何か準備は必要かといった盲導犬に関する質問や、ユーザーが困っている様子だったら、どのようにお声がけすればよいか等をご担当者さまからご質問いただき、当協会職員からはさまざまな場面での盲導犬ユーザーへの接し方やサポート方法をご提案しました。スタッフの皆さまには「補助犬受け入れ」について、とても好意的に取り組んでいただき、各施設での受け入れの仕方・対応や事前準備などそれぞれの部門に応じた対応を検討してくださいました。
 レゴランド・ジャパン・リゾートはホテル・水族館・レストランも併設されており、あおなみ線からの入園も非常に便利です。またレゴランドには、触っていいオブジェが沢山あるので、視覚に障害のある方も触りながら楽しめるテーマパークです!「安全により楽しく、補助犬ユーザーの受け入れをしたい!」とご担当者さま。
ご興味のある方は是非、レゴランドへ遊びに行かれてはいかがでしょうか。

4.盲導犬ユーザーのコーナー 
「犬が見せてくれた風景」  岡山県 井上孝江
 私は21歳の時に左目が網膜剥離になりました。その後30年ほど片目で生活をしていましたが、右目も緑内障をはじめ病気が重なり両目ともに見えなくなりました。そこから引きこもりの生活となっていました。
 ある時、友人が熱心に出かけようと誘ってくれ、出かけました。その時が見えなくなって初めての外食でした。友人が食べ終わった?と聞いた後、私が極度の緊張からうまく食べられず、服や床下に食べ物を落としてしまっていたことに、初めてその姿を見た友人は以前とのギャップに大変ショックを受けていたようでした。この時から、私は人前での食事に苦手意識を持つようになってしまいました。他にも外出をしましたが、以前とのギャップが大きく、前にも増して引きこもり生活になりました。抜け殻のような毎日で朝から晩までラジオを聞いていました。
 そんなある日「『諦める』という言葉の意味は、仏教用語では目の前にある事実をあきらかにする事、 そしてそれを受け止める事という意味です」そんな言葉がラジオから流れてきました。その言葉を聞くと同時に、亡き父の声が聞こえた気がしました。父は「人間にとって一番大切なことは、苦しい時、つらい時に立ち上がれるバネを持つことだと思う」と常日頃言っていました。その2つの言葉が重なって、全身が奮い立つような気持ちになりました。この出来事をきっかけに今できることをと思い、犬がこの上なく好きだったため、盲導犬にかけてみようと1歩を踏み出しました。
 そこで出会ったのが1頭目の盲導犬アビーでした。アビーとの毎日の訓練は無我夢中で、いつしか目の見えない虚無感も忘れていました。そうして1人で歩行できるようになった頃苦手だった外食にチャレンジしました。席で緊張していた時、隣から中年男性の声が聞こえました。「犬がおる!犬なんかと飯を食いたくねえ!1番遠いところに連れていけ!」と言われました。ですが隣にいるアビーのことを思い、勇気を振り絞って「申し訳ございません。盲導犬とお邪魔しております。よろしくお願いします。」と声をあげました。すると何人もの人が「頑張ってね」など、温かい声をかけてくれました。私は帰る途中涙が止まりませんでした。
 アビーが来て2年目の春にはライオンズクラブの年次大会もあり、1000人を超える人の前でインタビューを受ける機会がありました。壇上から降りる際、仮設の急な階段を降りなければなりませんでしたがアビーは堂々と私を連れて降ろしてくれました。するとその姿を見た方々から「ブラボー!」「素晴らしい!」と割れんばかりの歓声を体全身で受けました。
 アビーとの8年間は2人で夢を見ているような日々でした。たくさんのものをくれたアビーは新しい温かいお家の家族になり、今一緒に歩いている2頭目のウィリアムが来てくれました。
 しかしウィリアムが来た後、夫が脳卒中で倒れ入退院を繰り返す辛い日々がやってきたのです。そのハードな毎日を支えてくれたのがウィリアムでした。買い物や病院など毎日の小さな困難を一緒に解決してくれるだけでなく天真爛漫な性格で私の心も癒してくれました。夫は家での介護は無理だといわれたほどでしたが、ウィリアムのおかげで今でも2人と1頭一緒に家で穏やかな日々を過ごせています。
 生活の中でこれまでは自分のことばかり考えていた私が、気づけば誰かの力になりたいと思えるようになっていました。そうして私は、中途失明の人たちをサポートする「綿の実」という団体を立ち上げ、今では月一定例会を行い年に1回は旅行もしています。
 そんな私には今、アビーとウィリアム、2頭からもらった新たな夢があります。1つは盲導犬とホノルルに行き、伴走者とマラソンを走ること。もう1つは私を救ってくれたアビーの14年間のアルバムを作成することです。アビーの誕生前からリタイア後の楽しい日々までのアルバム集です。
 アビーとウィリアム、2頭の盲導犬のおかげで、私は絶望していたあの頃から自分の人生を取り戻すことができました。そんな素晴らしい盲導犬たち、それに関わってくださった方々。その偉大なるヒーローたちに大いなる感謝をしております。心からありがとう!!

5.盲導犬情報ボックス
○都道府県別 日本の補助犬実働数
 現在の日本の補助犬実働数は次のようになりました。
・盲導犬実働頭数(2024年3月31日現在)796頭
社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会 自立支援施設部会盲導犬委員会  「2023年度盲導犬訓練施設年次報告書」より。
*この数字には、連合会に加盟していない育成団体の数字が含まれています。
・介助犬と聴導犬実働頭数(2024年4月1日現在)介助犬59頭、聴導犬53頭
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部「身体障害者補助犬実働頭数(都道府県別)」より。

 盲導犬実働数796頭に、1頭の盲導犬を2人で使用するタンデム方式の盲導犬使用者20組を加え、盲導犬使用者数を算出してみると、日本国内で盲導犬を使用している視覚障害者の方は816人です。
 なお、タンデムの盲導犬使用者を地域別にみると、都道府県別では、広島県に3組、東京都・大阪府・和歌山県・鹿児島県に各2組の他、山梨県・長野県・岐阜県・愛知県・兵庫県・島根県・岡山県・山口県・福岡県に各1組おられます。
また、国内の指定法人が1年間に育成した盲導犬の頭数は100頭。うち新規の使用者のパートナーとなった盲導犬は27頭、盲導犬の代替えは73頭で、年間育成頭数の約73%が代替えとなっています。
都道府県別 日本の補助犬実働数
 盲導犬、介助犬、聴導犬の順で数字を掲載
北海道 41 1 0
青森県 6 0 0
岩手県 6 2 0
宮城県 18 1 0
秋田県 9 1 0
山形県 6 0 0
福島県 17 0 0
茨城県 17 1 0
栃木県 8 1 0
群馬県 10 1 0
埼玉県 48 2 1
千葉県 20 4 1
東京都   97 12 15
神奈川県 63 7 9
新潟県 22 0 3
富山県 4 0 0
石川県 10 1 1
福井県 7 0 0
山梨県 14 0 0
長野県 16 0 0
静岡県 28 0 2
愛知県 32 4 2
岐阜県 7 1 0
三重県 7 1 0
滋賀県 9 0 4
京都府 9 2 1
大阪府 52 7 7
兵庫県 32 3 0
奈良県 15 1 2
和歌山県 3 0 2
鳥取県 4 0 0
島根県 10 0 0
岡山県 13 3 0
広島県 19 1 0
山口県 16 0 0
徳島県 7 1 0
香川県 6 0 0
愛媛県 12 1 3
高知県 6 0 0
福岡県 22 0 0
佐賀県 4 0 0
長崎県 4 0 0
熊本県 5 0 0
大分県 7 0 0
宮崎県 10 0 0
鹿児島県 10 0 0
沖縄県 8 0 0
合計 盲導犬796頭、介助犬59頭、聴導犬53頭

6.編集後記
今年4月に改正障害者差別解消法が施行され、事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化されました。何が「合理的配慮」にあたるのか、それはお一人おひとり、違うのではないでしょうか。大切なことはコミュニケーション。 
双方の対話を重ねることで、画一的な対応ではない、互いにその人らしさを認め合う共生社会の実現に繋がります。

『盲導犬情報』 第33号 ~認定NPO法人全国盲導犬施設連合会 情報誌~
■発行責任者 井上 幸彦
■編集責任者 篠田 林歌
■編集 認定NPO法人全国盲導犬施設連合会事務局
    〒162-0065 東京都新宿区住吉町5-1吉村ビル2階
    電話:03(5367)9770 FAX:03(5367)9771
    https://www.gd-rengokai.jp/
E-mail:gd_rengokai★peach.ocn.ne.jp (★を@に替えて送信してください)
■発行 認定NPO法人全国盲導犬施設連合会
 【加盟団体】(公財)北海道盲導犬協会 (公財)東日本盲導犬協会 (公財)日本盲導犬協会 (社福)中部盲導犬協会 (公財)関西盲導犬協会 (社福)日本ライトハウス (社福)兵庫盲導犬協会 (公財)九州盲導犬協会
■協力 社会福祉法人 日本盲人社会福祉施設協議会
■発行日 2024年9月30日


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