『盲導犬情報』 第29号 〜認定NPO法人全国盲導犬施設連合会 情報誌〜

盲導犬情報 第29号


今号の内容

  1. 「2022ほじょ犬の日 啓発シンポジウム」に参加
  2. 「みんなで対話イベント 見える人・見えない人・見えにくい人 もしかする未来の『モビリティ』」について
  3. 盲導犬ユーザーのコーナー
    「盲導犬と歩いて20年」 岐阜県 藤田亜希
  4. 盲導犬情報ボックス
    「都道府県別 日本の補助犬実働数」
  5. 編集後記

1.「2022ほじょ犬の日 啓発シンポジウム」に参加

 2022年5月20日、超党派の国会議員でつくる身体障害者補助犬を推進する議員の会(補助犬議連)主催による「2022ほじょ犬の日 啓発シンポジウム」が衆議院第一議員会館にて開催され、国会議員、補助犬ユーザー、その他関係者含め、会場とオンライン上で、総勢100名を超える参加者が集まり、皆で補助犬法成立20年の歩みを振り返りました。

 シンポジウムの第一部では、「補助犬法成立・改正・そして20年の歩みを振り返って」というテーマのもと、法の成立に立ち会い、改正に関わったさまざまな立場の方々から、当時の心境や今後の展望などが語られました。

 第二部では、「補助犬使用者の未来に向けて、これからの10年を考える」をテーマとした講師による講義、その後は受け入れ拒否問題について、会場を交えたディスカッションを行いました。

 補助犬ユーザーから病院で補助犬を同伴することのできた好事例が紹介される中、講師の方々からは、「補助犬が入ってよいエリアと入ってはいけないエリアの線引きには、科学的根拠とガイドラインが必要であり、一定の基準を明確化できたら合理的である」、との声が上がりました。

 また、講師の一人である大胡田弁護士からは「補助犬受け入れ拒否が起こった際の交渉としては補助犬法だけではなく、差別解消法も使うと良い」と解説がありました。(大胡田弁護士は、本シンポジウムの講義で補助犬法の規制対象となっていなかった事業や、努力義務とされていた事業についても、差別解消法では補助犬の受け入れが法的な義務となることを参加者に説明)

 最後に、厚生労働省より2021年度はガイドラインの作成や駅構内でポスターやステッカーの掲示を行ったことが述べられ、閉会しました。

 当初16時までの予定であったシンポジウムが終了したのは17時。会場もオンライン参加者も、時を忘れて大いに盛り上がりました。これからの未来に向けて、育成団体・ユーザー・事業に携わる皆で力を合わせて、補助犬事業を盛り上げていこう、と機運の高まるシンポジウムでした。

2.「みんなで対話イベント 見える人・見えない人・見えにくい人 もしかする未来の『モビリティ』」について

 新型コロナウイルスは、私たちの生活に大きな変化をもたらしました。外出自粛によりテレワークの拡大やオンライン会議の推進、プライベートでも外食や旅行を控えるなど、「自宅で過ごす」、「移動をしない」ことで感染拡大を防ぐことを強く求められていたように感じます。

 そんな中、コロナ禍での移動制限について感じたこと、視覚障害を持つ方々が移動で感じている課題についてなど、新しい移動・交通の理想像をみんなで考える対話イベント「見える人・見えない人・見えにくい人 もしかする未来の『モビリティ』」(東京大学大学院新領域創成科学研究科 盲導犬歩行学研究室主催)が6月25日、日本科学未来館にて開催されました。

 開会にあたり、主催者である東京大学盲導犬歩行学研究室の渡邊学特任教授は「コロナ禍での「移動」について参加者一人ひとりが考えてほしい。イベントを通じて皆さん自身が主役として感じ、考え、解き明かしてほしい」と、参加者も聞くだけではなく、一緒に作り上げていくイベントにして欲しいと訴えかけました。

 講演は、東京大学生産技術研究所の長谷川悠先生の講演からスタート。「コロナ後のモビリティについて考える〜移動って何だろう〜」というタイトルでのお話でした。

 長谷川先生はご専門である交通工学の話をはじめ、これまでの交通が目指してきたものと、新型コロナウイルスの影響により、不要不急の外出禁止、在宅勤務等の導入等で「移動しない」という選択肢が登場したことによる交通の変化について、参加者に分かりやすくお話されました。

 次に、全日本盲導犬使用者の会 山本誠会長より、「見えない人 見えにくい人が考える『理想のモビリティ像』」というタイトルの講演がありました。

 山本会長は「次に挙げる4つが充実していると理想のモビリティ・快適な移動が実現される」として、^汰瓦任△襪海函↓移動に役に立つシステム、自分で判断できる自己完結型の移動、ぐ榮飴間の自由化、を挙げました。

 の「自分で判断できる自己完結型の移動」については、「赤だから渡らない、青だから渡る」という元々の信号のシステムを利用して、視覚障害者も信号を渡ることができるアプリの存在を紹介し、自分で判断できることが、自己肯定感に繋がることをお話下さいました。さらにい痢岼榮飴間の自由化」の部分では、「視覚障害者の移動は、普通の人より速さが制限されてしまう。でも、見えない人も歩行に速さを求めても良いのではないだろうか。盲導犬と歩く仲間たちは、盲導犬歩行を『爽快』、『快適』と口々に表現する。この『見えていた頃を取り戻せた』感覚を白杖で歩く時にも作り出せれば、快適な移動になる」と、理想のモビリティを語りました。

 ちなみに同行していた山本会長のパートナー(盲導犬)は、注目されることが恥ずかしかったのか、終始机の後ろに顔を隠していましたが、会長の足元で静かに耳を傾けていました。

 山本会長が席に戻ると、東京大学生産技術研究所の松山桃世准教授の「哲学対話」の時間になりました。

 松山准教授は冒頭に「話し合う中で生じた疑問やその『もやもや』を持ち帰ることが目的」と哲学対話の主旨を説明。早速、参加者同士でグループを作り、「みんなはなぜ移動しているの?」というテーマで、ディスカッションを繰り広げました。

 中には「移動に『爽快感』を感じるのはなぜか?」を議論の中心にもってきて、闊達な意見交換を行っているグループもありました。どんな意見も否定せず、自由に発言できる場だった為、話はさまざまな方向へ飛躍しましたが、まさに哲学対話といえる時間になりました。その証拠でしょうか、哲学対話終了後も、参加者は皆、それぞれのグループで話し合った内容に思いを巡らせている様子でした。

 休憩を経て始まったのは質疑応答の「みんなでじっくりお話ししましょう!」です。ここからは先に講演された長谷川先生と山本会長、そして本イベント後援の日本盲導犬協会山口専務理事が登場し、参加者からの質問に答えながら、白杖歩行と盲導犬歩行の違いや、盲導犬の価値について語り合いました。

 続いて行われたのは、松山桃世准教授のひみつの研究道具箱ワークショップ。

 「将来の移動に必要なツールは?」というテーマで、カードを使いながら課題を解決するゲームの始まりです。このワークショップで使うカードは、東京大学生産技術研究所で研究中の最新技術。参加者同士で再びグループになり、さまざまな分野の技術が書かれた52枚のカードを、自分なりに組み合わせて「移動しにくさ」を解決する為のアイディアを出し合う、楽しい時間となりました。

 本イベントを総括した日本盲導犬協会山口義之専務理事は「障害の概念が個人モデルから社会モデルに変化していて、社会の方が障害を作っている、という考え方になっている。『目の見えない人』と一括りにせず、一人ひとりを理解すること。さらにはお互いの立場になって考えることの大切さが、今日の参加者とのコミュニケーションの中で改めて実感できた」と閉会の挨拶をしました。

 皆様にとって、理想のモビリティとはどのようなものでしょう。きっと100人いれば、100通りの答えがあると思います。今回のイベントでも「理想のモビリティ」に対する「正解」は出ていません。しかし、「モビリティ」という言葉をきっかけに、自分自身が感じたことと自分以外の人が感じることを対話しながら知ることで、他者を知ることができ、ひいては多様性を分かり合うことにも繋がる、そんなことを感じさせてくれるイベントでした。

 今後も同様のイベント開催を企画しているようですので、みなさんももしよければ参加してみませんか。

 

最後に、本イベントの主催者情報を掲載いたします。

 終わり

3.盲導犬ユーザーのコーナー

『盲導犬と歩いて20年』   岐阜県 藤田 亜希

 盲導犬と歩き始めて20年が経ちました。

 本当にあっという間に20年を過ごしました。

 盲導犬と歩きたいと思ったきっかけは白杖で歩くことが難しかったからです。

 盲導犬を申し込んでから2年8か月後に盲導犬との共同訓練を受け、歩けるようになりました。

 共同訓練中は、道路を歩くことから、買い物まで、いろいろな経験をすることができました。

 ハーネスを道路の状況によって持ち替える方法がなかなか理解できず、盲導犬協会の皆様には大変ご迷惑をおかけしました。

 協会の皆様は、私にも理解できるように説明してくださり、訓練時間を延長して教えてくださいました。

 そして、訓練を終了し、自宅へ帰ることができました。

 最初は近所を歩くことを主にしていましたが、交通機関を乗り継いで遠い場所へ出かけることができるようになりました。

 そして、いろいろな方に道をお尋ねしながら、東京や大阪へ音楽を聞きにいくこともできるようになりました。

 今は、3頭目の盲導犬といっしょに生活しています。

 毎日買い物や通勤に、いっしょに歩いています。

 盲導犬と出会って、安全に歩くことはもちろん、たくさんの皆様に出会い、経験を積み重ねさせていただきました。

 出会えたことにとても感謝しています。

 これからも、私が歩ける間は、盲導犬といっしょに生活していきたいと思います。

 盲導犬と関わってくださるすべての皆様に感謝いたします。

4.盲導犬情報ボックス

○都道府県別 日本の補助犬実働数

 現在の日本の補助犬実働数は次のようになりました。

*この数字には、連合会に加盟していない育成団体の数字が含まれています。

社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会 自立支援施設部会盲導犬委員会
「2021年度盲導犬訓練施設年次報告書」より。

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部「身体障害者補助犬実働頭数(都道府県別)」より。

 盲導犬実働数848頭に、1頭の盲導犬を夫婦二人で使用するタンデム方式の盲導犬使用者20組を加え、盲導犬使用者数を算出してみると、日本国内で盲導犬を使用している視覚障害者の方は 868人です。
 なお、タンデムの盲導犬使用者を地域別にみると、都道府県別では、広島県に3組、東京都・大阪府・和歌山県・鹿児島県に各2組の他、長野県・岐阜県・愛知県・滋賀県・兵庫県・島根県・岡山県・山口県・福岡県に各1組おられます。
 国内の指定法人が1年間に育成した盲導犬の頭数は113頭。うち新規の使用者のパートナーとなった盲導犬は30頭、代替えは83頭で、年間育成頭数の73.5%が代替えとなっています。

都道府県別 日本の補助犬実働数

盲導犬、介助犬、聴導犬の順で数字を掲載

盲導犬 介助犬 聴導犬
北海道 46 1 0
青森県 6 0 0
岩手県 8 2 0
宮城県 23 1 0
秋田県 11 1 0
山形県 6 0 0
福島県 18 0 0
茨城県 17 0 0
栃木県 12 1 0
群馬県 8 1 1
埼玉県 47 3 5
千葉県 26 3 1
東京都 93 12 15
神奈川県 61 6 7
新潟県 27 0 2
富山県 6 0 0
石川県 13 1 1
福井県 6 0 0
山梨県 16 0 0
長野県 17 1 0
静岡県 33 0 2
愛知県 35 2 2
岐阜県 7 1 0
三重県 9 1 0
滋賀県 11 0 3
京都府 10 3 3
大阪府 51 8 8
兵庫県 33 2 0
奈良県 15 0 6
和歌山県 3 0 3
鳥取県 5 0 0
島根県 12 0 0
岡山県 15 3 0
広島県 17 1 0
山口県 15 0 0
徳島県 6 2 1
香川県 7 0 0
愛媛県 12 1 2
高知県 6 0 0
福岡県 23 0 0
佐賀県 4 0 0
長崎県 4 0 0
熊本県 5 0 0
大分県 10 0 0
宮崎県 11 0 0
鹿児島県 13 0 0
沖縄県 9 1 1
合計 848 58 63

5.編集後記

 今ではすっかり定着したオンライン会議。当連合会でもさまざまな会議や打ち合わせは、オンライン会議を活用しています。今回の29号でご紹介した「ほじょ犬の日 啓発シンポジウム」でも、オンライン上から多数参加していました。時や場所を選ばず、気軽に人と繋がれることはとても便利に感じる一方、直接会って、雑談を交えながら交流する機会も大切にしたいと考える今日この頃です。