『盲導犬情報』 第28号 〜認定NPO法人全国盲導犬施設連合会 情報誌〜

盲導犬情報 第28号


今号の内容

  1. 第7回盲導犬育成ジャパンセミナーを開催
  2. 『補助犬衛生管理の手引き』が発行されました
  3. 『補助犬ユーザー受け入れガイドブック』について
  4. 盲導犬と行く!全国津々浦々観光情報〜糸島編〜
  5. 盲導犬ユーザーのコーナー
    『笑顔と勇気をありがとう』    山口県 木村幸子
  6. 盲導犬情報ボックス
    ○2021年に発行された盲導犬に関する文献
  7. 認定NPO法人全国盲導犬施設連合会からのお知らせ
  8. 編集後記


1.第7回盲導犬育成ジャパンセミナーを開催

 2022年2月8日から9日の二日間、「全国盲導犬施設連合会主催 盲導犬育成ジャパンセミナー」を日本盲導犬協会神奈川訓練センターにて、会場参加とオンライン参加のハイブリッド型で開催しました。

 今年で7回目を迎えた本セミナーでは総勢100名を超える連合会加盟8施設の職員が参加し、盲導犬ユーザーの安全で快適な歩行の実現に向け、盲導犬の育成から共同訓練に至るまでの工夫や課題を共有すべく、さまざまな研究結果の発表や教育講演が行われました。

 教育講演では、環境省の野村(のむら)動物愛護管理室長を講師としてお迎えし、「動物の愛護及び管理に関する法律の改正について」というテーマで講演いただきました。また麻布大学介在動物学研究室の永澤(ながさわ)講師に、日本盲導犬協会との共同研究による成果「イヌの社会性発達とヒトとの共生」について発表いただきました。

 各協会職員からは「消防訓練時の犬の避難について」、「盲導犬ユーザーに関するクレームの分析」や、「視覚障害者支援アプリを活用した盲導犬歩行の検証と成果・課題について」などの発表があり、その内容は多岐にわたりました。現地参加・オンライン参加に関わらず、参加者との積極的な質疑応答もあり、闊達な意見交換で大いに盛り上がりました。

 各協会の職員一人ひとりが、セミナーに参加することで知識を共有し課題解決に向けて相互研鑽することができます。今後も視覚障害者の自立と社会参加への支援を目指すべく、本セミナーを有意義なものにしていきます。

2.『補助犬衛生管理の手引き』が発行されました

 2021年3月、『補助犬使用者及び訓練事業者のための補助犬衛生管理の手引き』という冊子が発行されました。
 この冊子は、厚生労働科学研究「身体障害者補助犬の質の確保と受け入れを促進するための研究」(2019年度〜2020年度)の成果物としてまとめられたものです。
 皆さんご存知のように、身体障害者補助犬法は、補助犬と生活する身体障害者の自立と社会参加の促進を目的とした法律です。この目的を果たすために、補助犬を訓練する育成事業者には質の高い補助犬の育成、補助犬ユーザーには補助犬の健康・衛生・行動管理が義務付けられています。
社会の受け入れをさらに促進するために、補助犬ユーザーや補助犬育成事業者は補助犬の衛生管理・健康管理を適切に行わなければなりません。この冊子は、そのための手引きとしてまとめられたものです。

 補助犬の衛生管理としては、

  1. 使用者による健康状態の観察
  2. 体重の管理
  3. 飲水の管理
  4. 被毛の管理
  5. 耳掃除
  6. 爪切り
  7. 足裏の管理
  8. 肛門腺の管理
  9. 歯みがき
  10. 装具の管理

 補助犬の健康管理としては、

  1. 定期健康診断
  2. 予防接種
  3. 各種予防措置(フィラリア・ノミ・マダニ)
  4. 人獣共通感染症の予防
  5. 熱中症の予防

 また、上記の項目に加えて、訓練事業者が対応することとして

 などについて、項目ごとにまとめられています。

 さらに、犬のボディコンディションスコア(犬の体型が痩せすぎ・太りすぎ・あるいは理想的かについて、わかりやすく説明されている表)や、ブラシ・爪切りの種類やドッグフードの保存方法なども掲載されています。

 ユーザーが行う毎日のチェック項目も掲載されていますので、その一部をご紹介します。

 なお、この冊子は、厚生労働省のホームページ「身体障害者補助犬」のページの中の「5 研究成果 (3)」からPDFデータがダウンロードできるようになっています。
https://www.mhlw.go.jp/content/000870083.pdf

3.『補助犬ユーザー受け入れガイドブック』について

 『補助犬衛生管理の手引き』と同様、厚生労働科学研究「身体障害者補助犬の質の確保と受け入れを促進するための研究」(2019年度〜2020年度)の成果物として、『補助犬ユーザー受け入れガイドブック』が厚生労働省のホームページ「身体障害者補助犬」のページの中の「5 研究成果 (3)」からPDFデータがダウンロードできるようになっています。

 ガイドブックは、

に分かれていて、それぞれのガイドブックと、その内容をイラストを入れてわかりやすくまとめたパンフレットのPDFデータとテキストデータがダウンロードできるようになっています。また、多言語パンフレットとして、さらに簡略化された内容で、英語版、中国語版、韓国語版、ベトナム語版のパンフレットもダウンロードできます。

 それぞれのガイドブックの前文の中には、
「補助犬の同伴拒否に関して、人々の関心は「犬」の受け入れに注目が向きがちですが、実際には、補助犬の同伴を受け入れることは、「犬」の受け入れを求めているのではなく、基本的な「権利」の保障を求めているのです。つまり、補助犬を断ることは障害のある人自身を断ることと同じといえます。障害があることや補助犬を同伴していることが、社会参加の壁になるようなことがあってはなりません。一方、補助犬法は、補助犬と暮らす障害のある人(以下、補助犬ユーザー)が補助犬とともに自立した社会参加の実現を推進していくために、犬の適切な管理という義務を補助犬ユーザーに課しています。これにより補助犬ユーザーの一層の社会参加を推進しようという理念があります。いかなる施設等において、補助犬を必要とする人の権利が保障される社会が望まれます。」
と記されています。

 なお、この成果物は、一般社団法人日本身体障害者補助犬学会のホームページの「各種資料」のページからもダウンロードできるようになっています。
https://jssdr.net/document.html

 こちらのホームページでは、ガイドブックだけでなく、参考資料として、医療機関編では、「スタッフ向け資料」「来院者向けHP用資料」「来院者向け掲示用資料」が、飲食店編・公共交通機関編・複合商業施設編では「スタッフ向け資料」、「利用者向け資料」、宿泊施設編では「スタッフ向け資料」「宿泊客向け資料」、賃貸住宅/分譲マンション編では、「家主向け資料」「入居者向け資料」もダウンロードできるようになっています。

 スタッフ向け資料は、要点が絞ってまとめられていますし、利用者などに向けた資料では、施設名等を書き入れればポスターとして掲示できるようになっています。

 このような資料がなくともスムーズにそれぞれの施設を利用できるような社会が、本来当たり前になっているべきではありますが、受け入れについての理解を求めなければいけない状況になった時には、ぜひこれらの資料を活用してみてはいかがでしょうか。

4.盲導犬と行く!全国津々浦々観光情報〜糸島編〜

公益財団法人 九州盲導犬協会

 九州盲導犬協会のある糸島市は、九州の北部、福岡県と佐賀県の県境にあり、福岡市内からは車で約40分、博多駅からは九州盲導犬協会のある筑前前原駅まで約45分のところにあります。玄界灘に突き出た糸島半島の中部および福岡県西端部を一帯の市域としており、北部と西部には美しい海岸線が広がり、数々の景勝を見ることができます。

 また南部には豊かな脊振山系の山々が連なり、四季を通じて山登りやハイキングを楽しむ人たちで賑わいます。

 糸島市を代表する「日本の渚百選」や「日本の夕陽百選」にも選ばれている景勝地桜井二見ヶ浦は、三重県伊勢二見浦が「朝日の二見浦」と称せられるのに対し、「夕陽の二見ヶ浦」として有名です。いにしえより櫻井神社の社地として神聖な場所とされています。海岸から150m沖に浮かぶご神体の夫婦岩はスズメ岩とも呼ばれ2つの岩が並んでいます。

 岩を結ぶ大注連縄の長さは30m、直径50cm、重さ1tもあり、毎年4月下旬から5月上旬の大潮にあわせ勇壮な法被姿の氏子により大注連縄つくりと大注連縄のかけ替えが行われます。

 6月の夏至の頃にはふたつの岩の間に夕陽が沈みます。二見ヶ浦周辺には多数のレストランやカフェなどがあり、四季を問わず大勢の人が訪れる人気のスポットとなっています。

 また、九州盲導犬協会より唐津方面に向かうと二丈パーキングエリアのすぐ下に、長さ1.1辧幅20mの弓状に広がる姉子の浜があります。この砂浜を歩くと、キュッキュッと不思議な音がします。これは石英の粒子が擦れあって鳴る音で、「鳴き砂」と言われゴミが少なく美しい砂である証しです。また、この海岸は玄海灘に浮かぶ島々の美しい眺めと夕陽の美しさで知られ、晴れた日には遠く壱岐も見えます。

 羽金山の中腹に位置する白糸の滝では、梅雨の時期にはアジサイが咲き、夏は涼を求めて沢山の人が訪れます。糸島郷土料理「そうめんちり」や「ヤマメ」も有名です。

 毎年、正月に九州盲導犬協会が募金活動を行う約1300年の歴史を誇る由緒ある寺院、雷山千如寺大悲王院が雷山の中腹にあります。境内には、福岡県の天然記念物、樹齢400年の大楓がそびえ、紅葉の頃には多くの見物客がその美しさに息をのみます。国の重要文化財「木造千手観音立像」や福岡県の指定文化財「木造多聞天像」を拝観することができます。

 福岡県だけではなく九州県内でも有名な「糸島ブランド」で知られる食材、農産物・海産物・豚肉、ハム・ウインナーの加工品など、糸島市内のレストランや海岸沿いのカフェでは地元の食材をふんだんに使った季節の味を楽しむことができます。

 直売所では野菜・果物・醤油・酒・お弁当・スイーツなど糸島ならではの美味しいものを購入することができます。冬には船越、加布里、福吉、唐泊の漁港に期間限定で牡蠣小屋がオープンし、糸島の豊かな恵みを受けて育った牡蠣を味わうことができます。

 また、福岡といえば博多ラーメンと思い浮かべる方が多いかもしれませんが、糸島に本店を持つうどん屋さんは地元の人にもとても人気です。

 福岡へ訪れた際には是非、糸島へも足を運んでいただき、四季折々の観光や食事を楽しんでください。

5.盲導犬ユーザーのコーナー

『笑顔と勇気をありがとう』
山口県 木村 幸子

 今、一緒に歩いている盲導犬は、4頭目の「うい」という初めての女の子です。歴代の相棒たちは、3頭とも男の子でした。

 私が住んでいるところは「ど」がつくぐらい、周囲は山と田畑に囲まれた田舎です。最寄りの駅に行くにはバスで約20分、市内までは自宅からバスでも電車でも乗り継いで約1時間ぐらいかかります。

 自宅周辺を散歩するにも、とにかく1本道。その直線上に、スーパーや郵便局や銀行があります。時々角やちょっとした階段を歩き、横断歩道を渡るぐらい。約1時間の散歩をしていても、すれ違う人はほとんどいません。たまにすれ違う時「こんにちは」「可愛いね」「お利口ね」と声をかけてもらい、私も「こんにちは」「ありがとうございまーす」と歩きながら返していると、傍から頭を上げて「僕のこと!」「私のこと言ってるのかな!?」 尻尾をフリフリさせてうれしそうに一緒に歩いています。バスや電車に乗ると「前の犬とちがうね、犬が代わったんかね? 毛の色が違うね」と声をかけてもらっています。

 ここは車で移動しないと不便なところです。私は車を運転することはできませんが、盲導犬使用者という免許をもらって、風を切り、季節を感じながら近所へ買い物に出かけたり、今日はどこへ行こうかな? どんなコースで出かけようかな? という楽しみを持ちながら自分の自由な時間を得たと思っています。車で移動していると得られない瞬間です。

 自分の足で歩いているからこそ、地域の方々とのちょっとしたふれあいを感じ、結構私たちを見てるんだな、見守ってくれてるんだなって、心がほっこりしてきます。小学校にも年に数回、盲導犬と視覚障害者の生活などについて話をしに行き、子供たちから元気をもらっています。

盲導犬と一緒でもできないことや、ちょっと道がわからなくなることもあります。そんな時、「すみませーん」と声を出してる自分がいます。それは、傍に相棒がいるから、勇気を出して声を出せてるんだと思います。白杖で歩いていた時にはできなかったことです。

 助けてもらった後は、笑顔で心から「ありがとうございました」と伝えられる。私にとって盲導犬は、心から笑顔にさせてくれる勇気の源です。沢山の方に見守っていただいていると思うと、本当にありがたい気持ちになります。盲導犬ってすごい力があるんだなと思ってます。

 これからもいろんなところで御縁を大切にして、いっぱい歩いて、盲導犬ライフを楽しみたいです。歴代の盲導犬たち、ありがとう。そして、「うい」これからもよろしくね!

6.盲導犬情報ボックス

○2021年に発行された盲導犬に関する文献

 2021年1月から12月の間に発行された書籍の中で、盲導犬に関する記述があるものをご紹介します。

【ノンフィクション】

『戦争障害者の社会史―20世紀ドイツの経験と福祉国家』
北村 陽子(著) 名古屋大学出版会

『民間団体認定制度―行政法研究余滴〈1〉』
碓井 光明(著) 信山社出版

『ハ−ベン―ハーバード大学法科大学院初の盲ろう女子学生の物語』
(点字データ着手 音声デイジー着手)
ハ−ベン・ギルマ(著) 明石書店

『学びは最高の遊び―幼児期のカリキュラム教育』
篠原妙子(著) 月影学園出版部

【フィクション】

『わんダフル・デイズ』
(点字データ着手 音声デイジー)
横関 大(著) 幻冬舎

『ルベン・ダリオ物語全集』
ルベン・ダリオ(著) 文芸社

【コミック】
『ハッピー!ハッピー♪<15> BE LOVE KC』
波間信子(著) 講談社

『いっしょにあるこうね 盲導犬コディ』(新装版)
篠原烏童(著) 秋水社

『ミラクルハッピー☆希望のどうぶつ物語キミとの絆』
春風 はな(編著) 西東社

【児童書】

『ビジュアルブック∞障害のある人とともに生きる1 目の不自由な人をよく知る本』
(点字データ 音声デイジー)
障害のある人とともに生きる本編集委員会(編)合同出版

『ルーミーとオリーブの特別な10か月』
(点字データ着手) ジョーン・バウアー(著) 小学館

【発表論文】

『デザイン学研究』 68巻1号
「形態最適化により設計された盲導犬用ハンドルの提案」
白髪 誠一(大阪工業大学)他

『AUDIOLOGY JAPAN』 64巻3号
「全盲難聴者の補聴, 音に対する課題とそれへの支援・対応」
高橋 信行(愛媛県立松山盲学校)他

7.認定NPO法人全国盲導犬施設連合会からのお知らせ

(1)2021年度資格認定事業の実施状況

 全国盲導犬施設連合会では、盲導犬希望者がどこの施設から盲導犬の貸与を受けても、ほぼ一定水準の盲導犬や歩行指導などのサービス提供が得られるように、盲導犬を育成する「盲導犬訓練士」と、盲導犬希望者へ盲導犬との歩行や毎日の世話の方法を指導する「盲導犬歩行指導員」の資格の認定事業を加盟施設の協力の下に2007年度より行っております。2021年度は、学科目・実技試験を行った結果、6名の盲導犬訓練士、4名の盲導犬歩行指導員の資格認定を行いました。

(2)2022年度の『デュエット』とポスターについて

 全国盲導犬施設連合会では盲導犬普及活動として、毎年『デュエット』という広報誌とポスターを作成・発行しています。
2022年度の『デュエット』では、盲導犬に関する基礎知識を特集テーマとして掲げ、盲導犬の役割やユーザーとの生活などを○×クイズ方式で紹介しています。表紙は、ハーネスを付けたラブラドール犬が人と道路を横断している写真を使用しました。
2022年度のポスターも、『デュエット』表紙と同じ写真を使用しています。ポスターのキャッチコピーは「君の存在が前に進む力をくれる。」です。オレンジ色を使い、温かみのある明るいイメージで作成しました。上半分が写真、下半分には次のような文章が書いてあります。
「全国盲導犬施設連合会は、盲導犬の育成・支援を推進することで、視覚障害者の自立と社会参加の促進を目指しています。どうぞ私たちの活動にご理解・ご協力の程、よろしくお願いします。」

 『デュエット』は、全国盲導犬施設連合会の募金箱を置いてくださっているスーパーなどで無料にて配布しています。置いてあるお店が近くにない場合は、連合会事務局(電話:03-5367-9770)にお問い合わせください。また、『デュエット』は、当連合会のホームページでも見ることができます。

8.編集後記

 盲導犬が現在のような系統立った訓練によって育成されるようになったのは、第一次世界大戦中のドイツでのことでした。そして、昭和14年、日本に4頭の盲導犬がドイツから輸入され、失明した傷痍軍人に渡されました。また、現在の標準的な歩行訓練プログラムが開発されたのは、第二次世界大戦中のアメリカでのことでした。

 戦争によって新しい技術が開発されてきました。しかし、多くの不幸な出来事が起き、多くの人が失明しました。起こしていい戦争などこの世に一つもありません。世界のあらゆる紛争が一日も早く終結しますように。