『盲導犬情報』 第22号 〜認定NPO法人全国盲導犬施設連合会 情報誌〜

盲導犬情報 第22号


今号の内容

  1. 第4回 盲導犬育成ジャパンセミナーを開催
  2. 国際盲導犬連盟(IGDF)セミナーレポート
  3. 盲導犬と行く!全国津々浦々観光情報〜京都編〜
  4. 盲導犬ユーザーのコーナー 『グリとの小旅行』千葉県 中村和子 盲導犬グリ
  5. 盲導犬情報ボックス
  6.  〇盲導犬に関する文献
  7. 認定NPO法人全国盲導犬施設連合会からのお知らせ
  8. 編集後記


1. 第4回 盲導犬育成ジャパンセミナーを開催

 2019年2月6日と7日の両日、「全国盲導犬施設連合会主催 盲導犬育成ジャパンセミナー」を日本盲導犬協会神奈川訓練センターにて開催しました。

 今年で4回目となる本セミナーには、総勢80名を超える連合会加盟の育成団体職員が一堂に会し、昨年に引き続き盲導犬ユーザーの安全で快適な歩行を通じた自立と社会参加が実現できるよう、様々な研究結果の発表や教育講演が行われました。

 今回は特別講演として、厚生労働省の秋山福祉用具専門官を講師としてお招きし、「障害福祉サービスにおける自立訓練について」、そして「海外から渡航してくる補助犬使用者への対応について」の2本立てで講演をして頂きました。

 また2日目の教育講演では、慶應義塾大学の中野泰志教授より「心のバリアフリー」をテーマとして、障害の定義や社会モデルの考え方の講義がありました。

 そのほか、施設職員による犬の医療や繁殖、「盲導犬引退犬研究から見えるシニアケアの未来」の研究報告など発表内容は多岐にわたり、参加者達は、互いの研究発表に真剣に耳を傾け、積極的な質疑応答も繰り出されました。

 さらに今回のセミナーでは、初の試みとして盲導犬の訓練プログラムと手法、訓練概要について育成団体それぞれがプレゼンテーションし、セミナー翌日に、前日のプレゼンテーション内容をもとに、訓練する上で日頃抱えている課題、例えば訓練犬に歩く時の空中の障害物をどう教えているかなど、実際に犬を用いてそれぞれが訓練手法を披露し、皆で検証・相互研鑽する場も設けました。

 ジャパンセミナーに参加することで、それぞれの協会職員一人ひとりが、長年にわたって培ってきた盲導犬育成のノウハウを互いに学び合い、共有財産とすることができます。連合会と加盟育成団体は、良質な盲導犬の育成を通じた視覚障害者の自立支援の実現に向け、今後も、本セミナーをより実りあるものへ成長させてまいります。

2.国際盲導犬連盟(IGDF)セミナーレポート

 2018年9月13日から16日にかけて、国際盲導犬連盟セミナーがオーストラリアシドニーで開催されました。2年に1度開催されるこのセミナーでは、世界各国から育成事業の関係者が集まり、研究成果の発表を行っています。

 世界の盲導犬協会では、盲導犬育成事業に対してどのような研究がされているのでしょうか。日本からの参加者の一人である関西盲導犬協会 木下幸子職員の参加レポートで、皆様へご紹介します。

IGDFセミナーに参加させていただいて 公益財団法人 関西盲導犬協会 木下 幸子

 今回シドニーで行われるIGDFセミナーに参加させていただく機会をいただいた。セミナーの発表内容ももちろんのこと、会場であるグレースホテルの環境やスタッフの方々、シドニー市内の街並みすべてが素晴らしいセミナーだった。

 セミナーの発表の中で特に興味深かったのはパピープログラムに関しての発表だった。「プラットフォーム」と呼ばれる犬のお立ち台のようなものや「パウパッド」と呼ばれる前足を乗せる台を使い、犬に「その場に留まること」や「正しいヒールの位置」などをパピー中に教えてもらうことによって、訓練に入った際には段差での停止にも有効とのことだった。留まる場所をはっきりとさせることで、犬にも人にも良い悪いがわかりやすく判断でき、パピーウォーカーにとっても褒めるかどうかを迷わなくてすむという利点もある。
 褒美としてのフード (以下「トリーツ」)をパピーウォーカーに使ってもらうことはハードルが高いのではと思っていた。発表者の協会であるアメリカのGuide Dogs for the Blind Inc,でも、初めてトリーツをパピーウォーカーに使ってもらうことが決定した際には反対する声が多かったそうだ。しかし、実際に導入してみると犬に色々なことを教える助けになり、今ではパピーウォーカーも積極的に教えてくださっているとのことだった。当協会でも、クリッカー(※)を取り入れる際には長年訓練をしていた人ほど抵抗があったが、実際に使うことで訓練士も犬もストレスなく訓練が出来るということに気が付き、今では有効的に使用している。パピーウォーカーにトリーツを正しく使っていただくことで、盲導犬の合格率向上の助けになるのであれば、導入することも良いのではないかと感じた。また、他の発表者の方がパピーウォーキングについて「パピーウォーカーは犬を育てるのではなく盲導犬を育てている」と言われていた。この意識の有無は、とても大きな違いだと感じた。その意識を持っていただくための取り組みとして行っておられるアイマスクを付けての手入れやユーザーからのレクチャーなどパピーウォーカーへの試みも大変興味深かった。

 今回の発表の中では、どこの協会も歩行指導員が少ないことや仕事を兼務しなければならないこと、人数が少ない中でどう工夫し、どう人を育てるのかなど実際に私たちの協会と同じような悩みを持つ協会が世界でも多くあることを知った。そこをどう打破していくのか、それぞれの協会の工夫なども知ることができ、参考になることが多くあった。また、IGDFの中で国際基準の歩行指導員認定を行うというのはどうかという話や、研修に職員を派遣したいが、なかなか海外に研修に行かせることは資金面でも個人的事情面でもハードルがあり導入をすることが難しいという話もあった。IGDFでの各国のつながりがとても密なものになってきていることを感じ、世界で同じ目標に向かって助け合う姿勢に感銘を受けた。前回のセミナーの時にも話にあがっていたが、繁殖セミナーがあるように、歩行指導員、訓練士などそれぞれの部門でのセミナーを開催してはどうかという話もあった。参加することで、それぞれの職員のモチベーションが上がり、悩みを共有することができる。今後、そのようなセミナーがあれば是非参加したいと感じた。

 今回のセミナーからIGDFにシンガポールとマレーシアの協会も加盟し、アジア圏の協会がまた増えた。パピーウォーキングに関するパネルディスカッションなどでも話にあがっていたが、数頭のパピーを寄贈するだけでそれらの協会は少しずつ発展していくことができる。また、それぞれの協会が発展することでその後のアジア圏の盲導犬協会の発展にもつながってくる。互いに協力しあうことで、アジア圏の盲導犬の発展に力添えできればと思った。

 最後の発表では「今後AIが発達し盲導犬ロボットが出来るかもしれない、その時に私たちの仕事はあるのか」という話もあった。技術の発達に加え高齢化による人口自体の減少、医療の発達による単一障害の視覚障害者の減少などの問題もあり、盲導犬事業は前途多難だ。その中でどう生き抜いていくか、視野を広げた柔軟な対応が求められる。自分自身も、日常の業務にばかりとらわれるのではなく、今後の盲導犬事業について考え続けていかなければならないと気付かされた。

 今回、セミナーに参加する機会をくださった全国盲導犬施設連合会様、そしてホスト協会として準備してくださったGuide Dogs NSW/ACTの皆様に感謝し、今回学んだことを今後の仕事に活かしていきたい。

(※)音の鳴る道具。クリッカーとフードを結びつけることで犬の動作を瞬時に肯定することができ、犬の自主的な行動を引き出すことにも有効な訓練方法である。

3.盲導犬と行く!全国津々浦々観光情報〜京都編〜

公益財団法人 関西盲導犬協会

 京都は、千年以上にわたり日本の都があった場所として、古い歴史を伝える文化財や伝統が今も受け継がれている観光都市。国内はもちろん海外からも、年間9000万人を超える観光客が京都を訪れます。そんな歴史の香りあふれる京都ですので、観光名所はいろいろあります。

 しかし、重要文化財も多く、直接ふれることができないものも多くあります。そこでいくつかの寺院では触れるミニチュアを用意しています。たとえば石庭で有名な竜安寺では、石庭のミニチュアが置かれていて、石の配置などを触って知ることができます。また、千体もの千手観音像が並ぶ三十三間堂では、本堂と千手観音像のミニチュアが用意されています。

 美味しいものもたくさんありますから、味わう楽しさもおススメです。日本酒やウィスキー、ビールの工場では、試飲ができるところもありますし、お店で日本茶ミニ講座を開き、美味しい日本茶の淹れ方を教えてくれる老舗の日本茶専門店もあります。八つ橋や七味など自分で作って味わえる体験教室に参加するのも楽しいですし、体験といえば、清水焼や西陣織など伝統工芸を体験できるお店もあります。

 もし、どこに行って何をしようか決められない、という方はプロにプランニングをお願いするという方法もあります。例えば、(有)京都旅企画では、リクエストに合わせたプランを提案していただけるそうですよ。

 当協会会報『ハーネス通信』では、毎号、盲導犬と一緒に神社やお寺を参拝したり、いろいろな体験をするユーザーの様子を紹介しているページがあります。詳しくお知りになりたい方は、当協会ホームページをご覧ください。

 また、「京都きものパスポート」といって、きものを着て特典協力施設・店舗を利用する時に、このパスポートを提示すると特典が受けられる、というシステムがあります。パスポートは、京都総合観光案内所などで配布していたり、インターネットからダウンロードできます。きものをレンタルして着付けてくれるお店もあるので、きものを着て京都の街をちょっとお得に観光してみませんか。

 ところで、皆さんは「京都のぶぶ漬け」ってご存知ですか? 遊びに行った家の人から「ぶぶ漬けでもどうどすか?」と言われたら、それは「もうそろそろ帰ったらどう?」という意味なので、「ごちそうさまです」なんて食べて帰ったら、あとで「なんて非常識な人だ」と言われる、という話です。筆者は、京都に引っ越す際、何人もの人からその話を聞かされたので、仕事で京都市内の家を訪問してお茶を出された時は、かなりビビりました。でも、実際はそんなことはありませんのでご安心を。確かに京都独特の言い回しはありますが、そんな京都の人の心にふれるのも旅の醍醐味。ぜひ地の京都の人との交流も楽しんでください。

 さて、関西盲導犬協会がある京都府亀岡市は、京都府の中西部に位置していて、旧名は「亀山」。織田信長を討った「本能寺の変」で知られる明智光秀が、戦国時代末期にこの地に亀山城を築きました。ちなみに、2020年のNHK大河ドラマは、この明智光秀が主人公となるそうです。明治2年に三重県亀山市と混同するからという理由で「亀岡」という地名に改称されました。

 そして、当協会の住所には「犬飼」という字(あざ)名がついています。「盲導犬協会があるから犬飼なのですか?」といった質問をたまに受けますが、実は、この地名はかなり古いもののようです。535年に全国に設置された天皇家の直轄地「屯倉(みやけ)」には、領地を守る集団「犬養部」がいて、犬を使って守衛をしていたと考えられており、犬飼の地名は犬養部に所縁があるのでは、という説があります。また地元の方からは「昔は集落に犬塚があり、大きな石が置いてあった。その昔、犬がムジナを退治して、腹の中から勾玉がでてきたという伝説もある」と伺っています。

 そんな犬に所縁の地に今の訓練センターが建って31年。3年前には犬舎を建て替えました。木造で木の香りがするので「木香(もっか)テラス」と呼んでいますが、犬舎というよりは、広いリビングルームに訓練犬たちが暮らしている、という感じでしょうか。京都に観光にお越しの際は、ぜひ亀岡にも足を延ばしていただけたら嬉しいです。

4.盲導犬ユーザーのコーナー

『グリとの小旅行』

 千葉県 中村和子 盲導犬グリ

 光をすべて失った私は、季節の巡りを花の香りや、光と風の戯れの中に感じます。そうなのです。私は、盲導犬グリとの歩行の中で、ほのぼのと季節を感じています。

 グリはハーネスを通して、もちろん安全に誘導してくれますが、それだけではありません。いつでも一緒に日々の喜びを分かち合っているのです。

 歩行している時に、グリに「ストップ」と指示を与えました。するとどうでしょう、グリは、
「ママ、どうしてここに止るの? 危ないところじゃないよ」
と、私を見上げています。
「グリ、ほうら、風さんが花の香りを連れてきたよ、もう、梅のつぼみが膨らんでるようね……」

 グリに笑いかけながら、「ゴー」と指示を与え、足取り軽くまた歩き始めるのでした。

 春がやって来ました。四方八方から、やわらかい光と風とが小鳥のさえずりを連れてきたのです。それはまるで、グリとの外出を誘ってくれているかのようでした。

「グリちゃん、ちょっと待っててね。『盲導犬情報誌』の原稿を書いているのよ……」

 わかった、とばかりにグリは、足元で眠り始めました。

 グリは、先日の車での小旅行の夢を見ているのでしょうか、時々眠りながら足を動かし、しっぽをパタパタ振っています。

 その日は友人達と、千葉県野田市から茨城県鹿嶋市に引っ越された共通の友人を訪ねました。グリは、後部座席の私の足元で伏せています。時々お座りをして、後ろに流れる景色をみているのでしょう、グリの「ここはどこかな?」という声が聞こえるようです。それから、私の膝の上に顎を乗せ、車の中での友人達との楽しい会話に加わっているようでした。

 この小旅行で私が気をつけたのは、敷物はグリのお好みの物を。そして、初めての場所なので、私自身は少しの緊張はあっても、互いにリラックスできるように、グリには笑顔で声かけをし、良く褒めました。

 その帰途のことです。鹿嶋市の海岸に友人が案内してくださいました。車から降りると、思ったより風が吹いています。友人がしきりに、周りの様子を知らせてくれました。それによると、波頭がところどころ白くなっているようです。寒いでしょうに、サーフィンをしている人がいて、季節を先取りしているのでしょう。

 グリはどうしたでしょう、海の広がりを頭を動かし、見ています。私はハーネスの動きで広がりを感じていました。グリは、繰り返し寄せては返す波を少しも怖がっていません。確かに、グリのハーネスを着けた盲導犬としての歩行を見ると、好奇心いっぱいでいつでも新しい経験を楽しんでいるのです。グリの心の広がりを感じた一日でした……。

5.盲導犬情報ボックス

○盲導犬に関する文献

 2018年1月から12月の1年間に発行された盲導犬が登場する書籍を調べてみましたのでご紹介します。

【書籍】

『ローラとわたし』 セグレ,キアラ・ヴァレンティーナ【文】/ドメニコーニ,パオロ【絵】 /杉本 あり【訳】(徳間書店) 2018年1月 【点字データ着手】

『オレオは本当にDogなの? - 視覚障害者の歌手とパートナー犬のものがたり』八汐 由子【著】(風土社(千代田区)) 2018年2月 【点字データ着手】

『光の道 盲導犬ラシッドからのメッセージ』松山真由美【著】(文芸社) 2018年2月 【点字データ・音声デイジー】

『もうどう犬べぇべ』セア まり【文】/平澤 朋子【絵】(ほるぷ出版) 2018年7月 【点字】

『セント・メリーのリボン (新装版)』稲見 一良【著】(光文社) 2018年6月

『ぼく、アーサー』井上 こみち【文】/堀川 理万子【絵】(アリス館) 2018年10月 【点字着手・音声デイジー着手】

『新・はたらく犬とかかわる人たち 〈1〉 福祉でがんばる!盲導犬・聴導犬・介助犬』こどもくらぶ【編】(あすなろ書房)2018年11月

【一部、盲導犬が取り上げられている書籍】

『キャリア教育に活きる! 仕事ファイル 第2期 動物の仕事』 小峰書店編集部【編著】(小峰書店) 2018年4月

『ハーネス物語』小笠原新【著】(文芸社) 2018年9月 【点字データ着手】

【コミック】

 『ハッピー!ハッピー♪ <12> BE LOVE KC』 波間信子(講談社) 2018年5月

6.認定NPO法人全国盲導犬施設連合会からのお知らせ

(1)2018年度資格認定事業の実施状況
全国盲導犬施設連合会では、盲導犬希望者がどこの施設から盲導犬の貸与を受けても、ほぼ一定水準の盲導犬や歩行指導などのサービス提供が得られるように、盲導犬を育成する「盲導犬訓練士」と、盲導犬希望者へ盲導犬との歩行や毎日の世話の方法を指導する「盲導犬歩行指導員」の資格の認定事業を加盟施設の協力の下に2007年度より行っております。2018年度は、学科目・実技試験を行った結果、7名の盲導犬訓練士、3名の盲導犬歩行指導員の資格認定を行いました。

(2)2019年度の『デュエット』とポスターについて
全国盲導犬施設連合会では盲導犬普及活動として、毎年『デュエット』という広報誌とポスターを作成・発行しています。
2019年度のデュエットでは、連合会の資格認定事業を特集テーマとして掲げています。連合会加盟協会で実施している盲導犬訓練士と歩行指導員の資格認定方法を分かりやすくご紹介しました。
デュエットの表紙は、ハーネスをつけたラブラドール犬と男性訓練士が見つめあいながらコミュニケーションを取っている写真を使用しました。
2019年度のポスターも、デュエット表紙と同じ写真を使用しています。水色を使い、さわやかですっきりとしたイメージで作成しました。ポスターのキャッチコピーは「ただいま訓練中!」です。
上半分が写真、下半分には次のような文章が書いてあります。
「安全に街中を歩きたい」
 視覚障害者の方の願いを叶える為、私たちは日々、より質の高い盲導犬育成を目指して活動しています。
どうぞ私たちの活動にご支援ご協力をよろしくお願いいたします。
デュエットは、全国盲導犬施設連合会の募金箱を置いてくださっているスーパーなどにあります。無料で配布していますので、置いてあるお店が近くにない場合は、連合会事務局(電話:03-5367-9770)にお問い合わせください。また、デュエットは、当連合会のホームページでも見ることができます。

7.編集後記

いよいよ平成が終わろうとしています。次はどんな元号になるのでしょうか。 今年のゴールデンウィークは10連休を楽しみながら、新しい時代の幕開けに注目したいですね。