『盲導犬情報』 第21号 〜認定NPO法人全国盲導犬施設連合会 情報誌〜

盲導犬情報 第21号


今号の内容

  1. 「海外から渡航してくる身体障害者補助犬使用者への対応に関する説明会」開催
  2. 2016(平成28)年度 身体障害者補助犬育成促進事業等実施実態調査結果
  3. 盲導犬ユーザーのコーナー『マーシュ・レジーナそしてワンドに励まされて』  森 鈴子
  4. 盲導犬情報ボックス 日本の補助犬実働数
  5. 編集後記


1.「海外から渡航してくる身体障害者補助犬使用者への対応に関する説明会」開催

 いよいよ、東京オリンピック・パラリンピックが2年後に迫ってまいりました。

 2020年には、海外から補助犬を連れて日本へ渡航してくるお客様が大勢いらっしゃるかもしれません。しかしながら海外から来る補助犬への対応については、現状日本では統一的な指針がなく、補助犬の認定を行う法人によって対応が異なります。

 そこで東京オリンピック・パラリンピック開催をきっかけとして、海外から補助犬を連れて日本へ渡航してくるお客様をどのように受け入れれば良いか、盲導犬指定法人が対応するべき事案等についての説明会が、2018年8月23日と30日、厚生労働省主催により行われました。

 説明会の司会進行は、厚生労働省の秋山福祉用具専門官により行われました。

 まず課題として挙げられたのが、日本と海外各国では「身体障害者補助犬」の定義と、認定方法が異なることです。日本の補助犬は身体障害者の社会参加が主たる目的で、「盲導犬」、「介助犬」、「聴導犬」の3種類に限られます。一方、海外の補助犬には身体障害者の社会参加の他、自閉症者や精神障害者等の精神安定のための犬や、糖尿病患者の低血糖やてんかん発作を探知する犬が含まれる場合があります。また補助犬の認定方法においては、日本では訓練・認定までのプロセスを補助犬法で規定していますが、海外では訓練・認定までのプロセスの法制がない国が非常に多く、国や州によっても犬の質にばらつきがある恐れがあり、育成団体が訓練した犬、個人が訓練した犬、そして偽を語る犬を区別する方法がないとの説明もありました。

 このような現状を踏まえ、海外の補助犬へどのように対応していくべきか厚生労働省で検討した結果の対応方針についても秋山福祉用具専門官より説明がありました。

 主な内容としては、渡航してくる補助犬については一定の条件の下、日本の「身体障害者補助犬」の定義と同等である旨を証明する書類「期間限定証明書」を指定法人が発行する、という方針案についてでした。証明書発行の条件としては、海外の国際的な訓練事業者の連合会の加盟団体で訓練を受けている場合のみ、盲導犬は国際盲導犬連盟(IGDF)の加盟団体で訓練を受けている場合に限ること、海外の訓練事業所から提出された訓練記録や動作を確認できる動画などにより日本の補助犬と同等と認めることが出来ること、輸出国での輸出検疫及び日本の輸入検疫の手続きが順調に行われていること、等が挙げられ、これらの条件が満たしている場合、期間限定証明書の発行が可能か検討いただきたいと、指定法人への依頼説明がありました。

 続いて、期間限定証明書の発行にあたって、具体的な対応方法のガイドライン案の説明があり、最後に秋山福祉用具専門官からの「期間限定証明書で統一して、皆で同じ方向を向いて取り組んでいただきたい」との言葉で説明を終了しました。

 また厚生労働省では、この証明書類が動物検疫所において活用できるよう証明書類発行プロセスについても検討しています。

 2020年、海外から補助犬を連れてくるお客様がどれくらいいらっしゃるのか、現時点では全く想像がつきませんが、受け入れるための対応を業界としてあらかじめ統一しておくことで、不要なトラブルが避けられ、海外からのお客様に日本を楽しんでいただけるよう、盲導犬・介助犬・聴導犬、それぞれの指定法人や関係団体が国の方針を理解し、それぞれの立場で協力していくことが大切です。

2.2016(平成28)年度 身体障害者補助犬育成促進事業等実施実態調査結果

 特定非営利活動法人 日本補助犬情報センターでは、都道府県・政令指定都市・中核市に、身体障害者補助犬育成促進事業等実施実態調査を行い、その結果を「2016(平成28)年度 身体障害者補助犬育成促進事業等実施実態調査結果」にまとめています。
 今回はその調査報告書の概要をご紹介します。

〇2016年度補助犬育成促進事業実施実態調査の結果

(1)2016年度 補助犬育成促進事業の実施状況(見込み含む)
(2)都道府県別の盲導犬育成促進事業実施頭数と1頭あたりの助成金額
(3)都道府県における補助犬育成促進事業の助成金交付先

〇補助犬に関する助成施策等の実施状況

(1)都道府県
埼玉県:
補助犬の健康診断や予防接種等、健康管理に必要な経費を助成している。
千葉県:
ヤクルトグループ(千葉県ヤクルト販売会社等)が、社会福祉法人千葉県視覚障害者福祉協会に例年2頭分の盲導犬育成資金を寄付している。(平成27年度は未活用の寄付金が累積していた為、一時休止したが、その後活用が進んだ為、平成28年度に再開され2頭分の育成資金が寄付された。) 県としては、寄付金による盲導犬給付の申請の受付および審査等並びに寄付金による盲導犬の贈呈式開催などを通じて協力している。
福井県:
補助犬の衛生管理(健康診断、予防接種、フィラリア予防薬等)にかかる費用の助成を実施
長野県:
県の動物愛護センターにおいて、補助犬の定期健康診断を希望者に無料で行っている。
鳥取県:
予防接種代助成
島根県:
「身体障がい者補助犬健康管理費助成事業」 補助犬使用者が補助犬に獣医師による健康診断、予防接種及びその他の疾病予防措置等を受けさせた場合にその費用を助成
香川県:
獣医師による健康診断、獣医師による予防接種及びその他の疾病予防措置等
(2)政令指定都市
仙台市:
餌料代給付
横浜市:
身体障害者補助犬定期健診等事業(補助犬医療証を発行し、市獣医師会所属の施設で定期健診、疾病にかかる診療を受けた場合の費用を市が負担)。
名古屋市:
身体障害者補助犬飼育費(1ヶ月あたり4,800円)。ただし、所得制限あり。
身体障害者手帳1級から3級の方で、日常生活の補助のために使用する補助犬および盲導犬として育成している犬に係る手数料の免除。登録申請手数料(3,000円)、狂犬病予防注射済票交付手数料(550円)、鑑札の交付手数料(1,600円)、狂犬病予防注射済票再交付手数料(340円)。
神戸市:
補助犬健康管理費の支給(所得制限有)。
登録申請手数料の減免(全額免除)。
狂犬病予防注射済票交付手数料の減免(全額免除)。
岡山市:
補助犬を現に使用し飼育している者に対し、飼育に要した経費の一部を助成(月額6,000円)。
広島市:
【身体障害者補助犬健康管理費支給事業】 身体障害者補助犬を使用・養育している者のうち、低所得者のため補助犬の養育に要する費用の負担が困難なものに対して、その一部を支給し、補助犬の適正な管理を行わせる。
(3)中核市
宇都宮市:
補助犬導入等補助金(補助犬ユーザーに対し、管理経費の一部を補助)(補助犬導入時に10万円、導入の次年度から年2万を5年間)。
身体障害者補助犬育成支援事業(補助犬ユーザーと無償貸与契約を交わし、補助犬の利用に供した育成団体に対し、上限20万円を補助)。
越谷市:
登録料の免除。狂犬病予防注射票交付手数料の免除。
長野市:
訓練交通費援護金:県より補助犬の給付対象になった方(候補者含む)が、身体障害者補助犬を使用する訓練を受ける場合の交通費の援助として援護金を支給している。
飼育費援護金:県より補助犬の給付対象になった方が身体障害者補助犬を飼育する場合の飼育費の援助として援護金を支給している。1頭あたり月額3,000円。
岐阜市:
補助犬飼育のための必要経費の一部を助成。
狂犬病予防注射済票交付手数料の免除。
 
豊田市:
狂犬病予防接種注射済票交付手数料の免除。
犬の鑑札の再交付手数料の免除。
狂犬病予防接種注射済票再交付手数料の免除。
姫路市:
1ヶ月5,000円の補助犬健康管理費を支給(所得税非課税世帯) 1件×5,000円×12ヶ月=60,000円。 ※所得税課税世帯は1ヶ月4,000円
尼崎市:
犬の登録手数料の免除。
狂犬病予防注射済票交付手数料の免除。
奈良市:
狂犬病予防注射済票の交付手数料(550円)の免除。
狂犬病予防注射済票の再交付手数料(340円)の免除。
犬の鑑札の再交付手数料(1,600円)の免除。
倉敷市:
飼育の為の必要経費(餌代)補助。
福山市:
補助犬の登録、狂犬病予防注射、狂犬病予防注射済票の交付、鑑札の再交付、狂犬病予防注射済票の再交付の手数料を徴収しない。

〇補助犬に関する相談・苦情等の受付の有無

(1)都道府県

(2)政令指定都市・中核市

3.盲導犬ユーザーのコーナー

『マーシュ・レジーナそしてワンドに励まされて』

  森 鈴子

 1999年9月、私は日本ライトハウス盲導犬訓練所の訓練生として、初めての盲導犬マーシュとの共同訓練を受けるため、千早赤阪村の訓練所にいました。 網膜疾患のため、1998年にはもう全盲になった私は、その年に運よく日常生活訓練を受けることが出来たのですが、中でも白杖歩行訓練はなかなかうまく出来ないのでした。

 例えば横断歩道をななめ横断してしまうという有様でしたから、ほとほと情けなくなってしまい落ち込んでしまう日々でした。そんな時盲導犬体験歩行の勉強会があり 私はためらわず参加希望を出しました。

 

 いざ本番になると驚きの連続で、ぎこちない私の白杖歩行とは比べ物にならないほどの盲導犬のスムーズな動きに、私はすっかり魅了されていきました。 早速盲導犬の訓練を申し込むことにし、一頭目の盲導犬マーシュとの共同訓練の日を迎えることになったのは、勉強会からわずか10ケ月後のことでした。 マーシュはイエローのラブラドール、とても元気な男の子でした。

 何しろハーネスを持つのも初めて、色々な訓練内容も生まれて始めて経験することばかりでしたから、私はおろおろするばかりで、マーシュも落ち着きませんでした。 それでも何とか4週間の共同訓練を終え、神戸の自宅に帰ることができマーシュとの生活が始まりました。 私の自宅は神戸の山間の地域で冬になれば雪が積もる日があるのです。そんなある日、見事に足を滑らせ捻挫をしてしまったのです。

 盲導犬歩行はもうできない状態になり、マーシュは訓練所で一時預かっていただくことになりました。信頼関係も出来つつあったマーシュと離れ離れに暮らすことを 余儀なくされ、悲しい日々でした。

 それでも新しい出会いもありました、ソーシャルダンスとの出会いでした。あるきっかけがあり、私は大阪府の堺市まで8回のダンスレッスンを受けることになりました。 幸い、私の足も回復し、マーシュとの歩行が出来るようになって間もなくのことでした。自宅からレッスン場まで2時間半位は掛かりましたが、小旅行気分でウキウキと 出かけたものでした。マーシュとの歩行にはまだまだ自信がありませんでしたが、有難いことに白杖訓練を受けていたころの友達が一緒にレッスンを受けることになって いましたから、途中の駅で待ち合わせてもらうことができ、心強い思いでした。8回のレッスンはあっという間に終わってしまいましたが、私はもっとダンスのレッスンが 受けたくて、今度は大阪市内で視覚障碍者対象のレッスン場を見つけ、再びダンスの勉強をすることになりました。ブルース、ワルツ、タンゴなど基本的なステップをみっちり 習うことができ、私はますますダンスの世界にはまっていきました。

 二頭目の盲導犬レジーナはすらりとした足の長い美形の女の子でした。ベテランのパピーウォーカーさんに育てられ、まさに非の打ち所のない盲導犬でした。 私はレジーナの恩恵を受け、様々な幸運に恵まれました。東京でのブラインドダンス選手権の出演が決まり、東京への一泊旅行も思い出の一つです。

 こんなこともありました。ダンスパーティ会場で声を掛けていただいたH先生には、盲導犬チャリティーダンスパーティを開催して頂いていて、現在も続けていただいて います。私は現在三頭目のワンドと暮らしていますが、健康維持のため、まだまだダンスも続けているのです。

 最後に私のつたない短歌を書かせていただき終わらせていただきます。

 「朝な朝な春を求めてプチ散歩盲導犬のワンドくんと」

4.盲導犬情報ボックス

○都道府県別 日本の補助犬実働数

 現在の日本の補助犬実働数は次のようになりました。

 2018年 3月末現在、全国の盲導犬実働数は、941頭、2018年9月1日現在、全国の介助犬実働数は68頭、聴導犬は67頭です。
 また、盲導犬実働数941頭に、1頭の盲導犬を夫婦二人で使用するタンデム方式の盲導犬使用者21組を加え、盲導犬使用者数を算出してみると、日本国内で盲導犬を使用している視覚障害者の方は 962人です。
 *この数字には、連合会に加盟していない育成団体の数字が含まれています。
 なお、タンデムの盲導犬使用者を地域別にみると、都道府県別では、広島県に3組、和歌山県・兵庫県・鹿児島県に各2組の他、宮城県、東京都、長野県、愛知県、滋賀県、大阪府、鳥取県、島根県、岡山県、山口県、福岡県、宮崎県に各1組おられます。
 国内の指定法人が1年間に育成した盲導犬の頭数は 139頭。うち新規の使用者のパートナーとなった盲導犬は48頭、代替えは91頭で、年間育成頭数の65.5%が代替えとなっています。

都道府県別 日本の補助犬実働数

 盲導犬、介助犬、聴導犬の順で数字を掲載

5.編集後記

 2年に1度開かれる「国際盲導犬セミナー」。今年は9月にシドニーで開催されます。 ちょうどこの盲導犬情報編集中に、日本の盲導犬訓練士たちもシドニーへ旅立ちました。 世界各国から、盲導犬育成事業関係者が集まり研究成果を発表する本セミナーで、 訓練士達はどのようなことを学んで帰ってくるでしょうか。次回の盲導犬情報でお伝えします。